タイ料理は独特な風味と複雑な味覚から、極端に好みがわかれる料理でもあります。
ここ数年のパクチー&エスニック料理ブームでかなり身近になり、カップヌードルの「トムヤムクンヌードル」は2014年にヒットし、今や定番ラインナップの一員となっています。
日本人に馴染みのあるタイ料理といえばトムヤムクンやガパオが挙げられますが、スパイスの効いたあの複雑な味はどうやって生み出されるのか、気になった事はありませんか?
タイ人の友人曰く「甘味・辛味・酸味」がバランスよく入っていない料理は美味しくないのだそうです。
厳密にいうと「甘味・辛味・酸味」以外にも旨味・塩味が加わり、タイ料理の絶妙な味が作り上げられているのです。
私がタイに留学していた時、タイ人の同級生に日本料理を振る舞ったことがありましたが、彼らが「おいしい」と反応してくれた料理は意外にもお好み焼きでした。
お好み焼きのソースは「甘味・辛味・酸味」がバランスよく配合されていて、タイ人が重要視する
辛味=スパイス
甘味=フルーツや野菜
酸味=お酢やフルーツ
という、美味しさの3大要素をきちんと満たしているのです。
反対に、評判があまり良くなくかったのは、おでんや茄子の揚げ浸しなどです。
日本人の私にとっては、お出汁の味がしっかりしていてとても美味しく感じたのですが、タイ人の友人からは「味が薄い」と散々な評価でした。
タイ料理は「様々な味覚を刺激される料理こそがおいしい」と、皆口を揃えるのです。
タイ料理を作り上げる5つの味覚
タイ料理で重要とされるのは、先程ご紹介した「甘味・辛味・酸味」に「塩味・旨味」を加えた5つの味覚と言われます。
タイ料理のレシピを見てみると、この5つの要素がきちんと含まれています。
辛味:味にピリッとした刺激を加える
代表食材:唐辛子・胡椒
タイには10種類以上の唐辛子があり、様々な料理にふんだんに使われています。
日本では乾燥した唐辛子を使うことが多いですが、タイでは生で食されることも多いのです。
特に料理の中に入れる唐辛子は生のものが多いですね。
また、唐辛子の中でもプリックキーヌーという小さな唐辛子はとても辛く、タイの唐辛子では最も辛い唐辛子といわれています。
写真では緑色をしていますが、完熟すると赤くなります。緑色のプリックキーヌーはグリーンカレーには欠かせない食材です。
プリックキーヌーは直訳すると
プリック=唐辛子
キー=糞・うんこ
ヌー=ねずみ
つまり、ネズミの糞のような唐辛子という意味です。
かずある唐辛子の中で小さいことからこの名前がついたのかもしれません。
また、タイ料理で感じられる辛さの元としては、胡椒も挙げられます。
日本では乾燥した胡椒を使うことが多いですが、タイ料理では生胡椒(プリックタイオーン)をそのまま素材と炒めた料理もあります。
例:豚の生胡椒炒め(ムーパッドプリックタイオーン)
また、胡椒には白胡椒と黒胡椒の2種類があります。
白胡椒は若い胡椒の実を水に浸し、皮をふやかして除去したものを天日干しにします。
黒胡椒は完熟した実を干して乾かしたものです。
どちらもピリッとした辛味があり、スパイスとしての利用される他にも、ムーヨー(豚肉のソーセージ)や、発酵食品の品質保持のためにも加えられる。
ムーヨーはコンビニでも多く売られているポピュラーな食品です。
酸味:さっぱりとした風味を加える
代表食材:タイライム(マナオ)・タマリンド
タイ料理に欠かせない酸味。日本料理でもお酢や柑橘類で酸味を加えることがありますね。
タイではタイライムであるマナオが多くの料理で使われています。日本のタイ料理店でレモンやライムを代用していることも多くありますが、レモンでは刺激が強すぎ、ライムでも風味や味が異なるため、出来上がった料理は全くの別物になってしまいます。
なぜこのような事が起きるかというと、このマナオ、実は日本へは生果実のままでは輸入する事ができないのです。そのため、日本のタイ料理店で使えるのは果汁ジュースかパウダータイプのマナオ。
もちろんレモンやライムよりもマナオ果汁やパウダーを使ったタイ料理の方が現地の味に近いのですが、フレッシュな独特の甘みと酸味は生果実とはやはり比べ物になりません。
また、タイ料理独特の甘味と酸味の代表食材としてはタマリンドというフルーツが挙げられます。
タマリンドは殻を割ると甘酸っぱい果肉が入っており、おやつでそのまま食べたり、ジュースや、ゼリー、シャーベットなどにして食べますが、実は調味料として知らず知らずのうちに食べている方が圧倒的に多いのです。
パッタイやマッサマンカレーなど、日本人に大人気のタイ料理にもタマリンドが使われています。
甘味:辛味と調和の取れた甘み、まろやかさを加える
代表食材:砂糖・ココナッツミルク・パームシュガー
タイ料理の刺激的な辛味と酸味をうまく中和し、コクを与えてくれる甘味として多く使われるのが砂糖やパームシュガーです。また、酸味つ加える食材としてご紹介したタマリンドも甘味を加えてくれます。
タイ料理では料理によっていろいろな砂糖を使い分けることによって味わいを深めていきます。
塩味:味を引き締める
代表食材:ナンプラー・塩
タイ料理の多くは、料理の味を引き締める役割としてナンプラーを使用します。
炒めものなどでナンプラーとは別に塩も入れる、ということはあまりありません。
ナンプラーはたまに「タイ醤油」と訳されることがありますが、これは少し誤解があります。
日本の醤油は大豆を発酵させて作ったものですが、ナンプラーはカタクチイワシなどの魚を塩漬けにし、約1年~1年半ほど熟成・発酵させたものです。原材料も製造工程も全く異なるため、香りも味も全く別物です。「タイ醤油」と呼ばれる所以は、日本で卓上にお醤油が並べれるように、タイではナンプラーが食卓にのぼるからかもしれません。
ナンプラー以外で日本の醤油のような役割を担うのがシーユーカオ、シーユーダム、シーユーワーン、ソースプルンロット(ソープーカオ)などです。
これらのソースは料理によって単体もしくは組み合わせて使いますが、複数組み合わせることによってタイ料理の複雑な味を生み出しています。
旨味:味にコクを加える
代表食材:カピ(エビ味噌)・ナンプラー・干しエビ
タイ料理には旨味調味料が多く使われています。
日本料理では出汁などを活用しますが、タイ料理ではナンプラーが多く使われますが、カピというエビ味噌や干しエビなどもポピュラーな食材です。
カピは、エビというよりアミのようなものを塩漬けにして発酵させてたもので、カピチャーハンや、野菜のディップソース、炒めものなどに使われています。
5つの味覚に更に華を添えるスパイス・調味料
先述した5つの味覚に、レモングラス、コブミカン、パクチーなどの「香り」を添えるのがタイ料理の大きな特徴です。
この「香り」についてもいずれご紹介する予定ですが、多くの「味覚」と様々な「香り」や「スパイス」が組み合わさって、魅力的なタイ料理が生み出されているのです。
この複雑な味の組み合わせを感じながら、是非タイ料理を楽しんでみてくださいね。
※日本語[カタカナタイ語│タイ文字] の順で記載しています。
ココナッツミルク│ガティ│Ka Thi│กะทิ
カピ(エビ味噌)│ガピ│Kapi│กะปิ
干しエビ│クンヘーン│Kung Heang│กุ้งแห้ง
レモングラス│タクライ│TaKhrai│ตะไคร้
唐辛子│プリック│Phrik│พริก
胡椒│プリックタイ│Phrik Thai│พริกไทย
白胡椒│プリックタイカオ│Phrik Thai Khaao│พริกไทยขาว
生胡椒│プリックタイオーン│Phrik Thai Oon│พริกไทยอ่อน
プリックキーヌー│プリッキーヌー│Phrik Khii Nuu│พริกขี้หนู
タマリンド│マカーム│MaKhaam│มะขาม
コブミカンの葉│バイマックルー│Bai Makruut│ใบมะกรูด
塩│クルア│Klua│เกลือ
薄口醤油│シーユーカオ│Sii Iew Khaao│ซีอิ๊วขาว
黒醤油│シーユーダム│Sii Iew Dam│ซีอิ๊วดำ
甘口の黒醤油│シーユーダムワーン│Sii Iew Dam Waan│ซีอิ๊วดำหวาน
砂糖│ナムターン│NamTaan│น้ำตาล
パームシュガー│ナムターンマプラーオ│NamTaan Maphraao│น้ำตาลมะพร้าว
ナンプラー│ナムプラー│Nam Plaa│น้ำปลา
酢│ナムソム│Nam Som│น้ำส้ม
黒胡椒│プリックタイダム│Phrik Thai Dam│พริกไทยดํา
タイライム│マナーオ│MaNaao│มะนาว
グリーンカレー│ゲーンキヤオワーン│Keeng Khiao Waan│แกงเขียวหวาน
トムヤムクン│トムヤムクン│Tom Yam Kung│ต้มยำกุ้ง
ガパオ│パットグラパオ│Phat KraPhao│ผัดกระเพรา
豚の生胡椒炒め│ムーパッドプリックタイオーン│Muu Phad Phrik Thai Oon│หมูผัดพริกไทยอ่อน
ムーヨー(豚肉のソーセージ)│ムーヨー│Muu Yoo│หมูยอ
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